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親子アートセラピーのご報告

11月3日、イスラエルからアートセラピーを長年教えているセラピストさんが来てくださり親子アートセラピーを開催しました。
アートセラピーはある材料で子どもたちが動物を作り、その後、いろんな材料を使って箱の中に動物たちが安心して暮らせる場所を作るというものでした。
机の上に敷いたシートの上で作業をするというザックリしたルールはありましたが、それ以外は子どもたちが作りたい物を自由に作ります。
子どもが「これ見て~」と言ってきたら作った物を褒める。「これ出来ないからやって~」と言ってきたら言われたところだけを助ける。
というようなアドバイスがあり、作った物を認められることで自信がつくそうです。
セラピー自体も「こうしなくてはならない!」みたいなものはなく、緩やかなアドバイスがあっただけなので、大人も自由にゆっくり作品作りが楽しめました。
うちの娘も幼稚園でいろんなものを作ってきますが、作る意味や、見て~と言ってきた時の対応のポイントが分かって良かったです。

最後の方に、セラピストさんに質問タイムがありました。
セラピストさんとの会話の中で、被災地にいる父親と離れて暮らすことはもちろん、母親も今の生活を受け入れられている訳でないということが子どもに影響しているのでは?という話になりました。
その会話が私的にはとても興味深かったので少しご紹介させていただきます。
セラピストさんに言われたことを箇条書きにしますね。(あくまで一セラピストさんの意見ですのでご参考まで)

・父親が被災地に帰る時に、母親は無理して子どもの前で平気だと振る舞う必要はないです。悲しんでもいい。ただ子どもになぜあなた(母親)が悲しいのかを伝える必要があります。そして、説明をした後、また来てくれるから。次来てくれるのが楽しみだねという前向きな気持ちも伝えましょう。
母親が悲しんでいるのを見ると、子どもは彼らなりに考え、「お母さんは自分が原因で悲しんでいる」と思ってしまうかもしれません。それを回避するため、あなたのせいで悲しんでいる訳でない。お父さんが帰ってしまって悲しいのだということを伝えることが大切。その後、ポジティブなことも伝える。
今の子どもに分かりやすい方法や言い方で伝えましょう。難しければ物語風にしてもいいでしょう。
説明すると子どもの中で彼らなりに状況が飲み込める(make senceって言ってました)のです。

・子どもがある程度説明すれば理解出来る年齢(6~7歳ぐらい)になったら、子どもが完全に理解出来なくてもいいので、今なぜこんな状況になっているかを正直に話した方が良いでしょう。
説明していなくても自分の家族にただならぬことが起こっているということを子どもは感じています。何か大変なことが起こっている。そしてそれが自分が原因ではないだろうか。と思うかもしれないので、なぜこうなってしまったかを説明し、「今回起こったことは親(大人)の問題であって、あなたに責任があるのではなく、あなたが解決しなければいけない問題ではない」ということを伝えることが重要です。
「親が対処し、いつか解決する」ということを伝える。親自身がこのことを乗り越えられる自信がないのなら、無理に「出来る」と言わなくてもいい。「今この問題について取り組んでいる(deal)」ということを素直に伝えましょう。
このセラピストさんの旦那様が過去に入院するということがあり、そのことを子どもたちに伝えるかどうか迷ったそうです。迷った結果、子どもたちに正直に伝えました。子どもたちは説明されていない時は、何か大変なことが起こってることを感じ、とても不安に思っていたけれど、説明されてとても納得し安心(安定)したそうです。

・母親が避難しなければならなくなったこの状況を受け入れられておらず精神的に不安定になることが、子どもに悪い影響を与えているのではないか?という質問に対してはセラピストさんはこう答えました。

「迷い」があるというのはとても自然なことです。ましてこんな大きなことが起こったのだから、この「避難」という決断が本当に正しいのか、またこの先どうなるのか、迷いや不安があるのは当たり前なのです。もしあなたが四六時中迷いや不安を抱えているのなら、その気持ちを誰かに聞いてもらう必要があると思います。
ただ今の生活を営む中で、迷いや不安を感じていない瞬間もあるのではないでしょうか?感じている時と、「そうでない時がある」ということに「気づく」ことが重要なのです。

・迷いや不安があったとしても、今の生活にたくさんの困難がありつつも、大きなトラウマを心に抱えつつも、「人生を豊か(rich)にする」ことは可能なんだということを子どもに伝えられたらいいですね。
(もちろんそう思えなければ無理する必要はありません)

・今はあなた方には選択肢がない。(被災地に戻るかどうかの選択肢ではなく、子どもを守るという大きな意味) やらなければいけないからこなしている状態です。でもいつかふと立ち止まった時に自分がどれだけ強くなったか気づくでしょう。

以上。

避難者といってもいろんな状況の方がおられるので、このアドバイスが当てはまらない方もおられると思います。
今回の震災で起こったことにこうすればいいという教科書はないので、それぞれが考えなければいけないのだけれど、いろんな方の意見を聞くというのは自分がどうありたいのかを考える上でとても有効だなと思います。

最初にも書きましたが、これは一セラピストさんの意見なのでご参考までに。
イスラエイドさんのワークショップは私にはいつもとても印象的です。